昭和を克明に記録した「喜劇王」の苦楽

『哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和』

2014年8月号 連載 [BOOK Review]

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喜劇役者として一世を風靡した古川ロッパは厖大な日記を遺した。本書はその日記を基本に彼が書いたもの(ロッパは文筆家でもあった)、周辺の人の書いたもので補強して、ロッパの全体像を描いたものである。著者は有馬頼寧の日記を読み解き、『恋と伯爵と大正デモクラシー』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、『日記逍遙 昭和を行く―木戸幸一から古川ロッパまで』の著作がある山本一生氏である。エノケンと並んで人気者であったロッパの伝記に「哀しすぎるぞ」というタイトルは、マルチタレント(声優、エッセイスト、司会者、脚本家、映画俳優等々)として大いに稼いだであろうロッパの晩年に遭遇した人気低落、「金なし」、喀血を繰り返す肺結核……という「地獄」のあがき、苦しみながらそれを克明に日記に記したロッパの姿を表現している。それが序章の冒頭、翌年亡くなる昭和三十五年の「東京最後 ………

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