編集後記

2014年9月号 連載
by 宮

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東電からヒトが抜け出す。震災から3年間に1665人が依願退職し、今年4~6月も98人が辞め、年間400人ペースだ。しかも、その7割が20~30代の若手である。おまけに2年連続で新卒採用をストップしたため、日本一高齢化が進んだマンモス会社(社員3万6千人の平均年齢43歳)になってしまった。


年齢構成は20代14%、30代23%、40代37%と、上に行くほどぶ厚くなる。この5月に50歳以上の社員約1万人を対象に、初めて希望退職を募り、6月末に1151人が退職した。おかげで50代の比率は28%から26%に下がった。


社長の廣瀬さんの社内向けメッセージは痛切だった。「今回退職される皆さんは、永年にわたり当社の事業を支え、震災以降の厳しい時期に、事故対応、安定供給確保、被災者さまやお客さまへの難しい対応に奮闘されたベテランの皆さんです……ひたすら残念でなりません」


一方、会社に残った勤続30年以上のロートルも報われない。震災時50歳以上の役職者を対象とする「福島行き」の人事異動が待っている。賠償、除染、復興推進の現地体制を強化するため、ベテラン管理職500人を送り込む目論見だ。


東京本店などで1週間の研修を受けた第一陣222人が赴任したのは7月1日――。福島復興本社代表の石崎さんは「何よりも地元を好きになること。自治体や仮設住宅に日参して、御用を伺い、できることはすぐやる、何でも屋に徹することです」と、心構えを説いた。


ほぼ全員が福島を知らず、あてがいの借り上げアパートやプレハブ仮設寮に単身赴任した。右も左もわからぬ「老兵」の多くは55歳。役職定年(57歳)を早めたので地位も肩書もない。「片道切符」の最後のご奉公だ。年収30%減が7%減になることが、せめてもの救い。耐え忍ぶ縁の下の力持ちである。

   

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