やさしさと土性骨
2010年10月号 連載 [ひとつの人生]
猛暑のさなか、91歳で逝った森澄雄の第15句集『蒼茫』が刊行された。昨年まで3年間の三百余句を集めた、最新にして最後の句集である。ぱらぱらと眺めていたら、石田波郷の名が目についた。花卯木ともに遊びし波郷かなふところ手夏もしてゐし波郷かな〈楸邨も波郷も佛龍の玉〉も含め4句。波郷は森澄雄の師、加藤楸邨や中村草田男とともに、戦時中から「人間探求派」として注目された俳人であり、澄雄は先行世代として私淑していた。そんな波郷との思い出を病床で反芻したのだろう、懐かしさ、楽しさにあふれている。ちょうど40年前、波郷の一周忌に澄雄はこんなことを書いている。「草田男(明治34年生)、楸邨(明治38年生)の明治生れに対して、波郷(大正2年生)は僕らと同じ大正生れであり、大正の作家であろう。そこに僕にはふと『大正のやさしさ』と云ってみたい気持も湧く」草田男の「西欧の知性 ………
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