「外国人マネー」で潤うニセコでも嫌悪感!/参院選「参政党」候補が善戦

きっかけは些細。人口の2割弱を占める外国人に対する地元民の嫌悪感が増している。

2025年9月号 LIFE

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7月20日に投開票された参院選。北海道選挙区の最後の3議席目を巡って、当選した自民現職の岩本剛人に約8500票差まで詰め寄り、次点となったのが参政党の新人、田中義人だ。

外国人が居抜きで買う

ニセコひらふ地区はすっかりコンドミニアム・ホテル街になった

Photo:Jiji Press

田中はニセコ地域の中心、倶知安町の元町議。3期目の途中で辞職し、北海道議選、衆院選に参政党の公認候補として立候補したものの、相次いで敗れ、今回の参院選に臨んだ。地元では、外国人による土地買収の問題点を早くから指摘し、マスコミにも積極的に情報を提供してきた人物として知られる。

地元ニセコ地域での田中の得票は当選した自民党と立憲民主党の三人の候補を抑え、トップだった。「日本人ファースト」の参政党の訴えが、外国資本によって潤ってきたはずのニセコ地域で支持を得るのはなぜか。

「人が雇えない」。ニセコ地域の観光施設では、ごく普通のチケットや物品の販売員でさえ、時給2千円でもなかなか集まらないという。外国人でごったがえす12月から2月までのハイシーズンになると、さらに時給は上昇。「時給3千円近く出さないと、清掃員の確実な確保は難しい」と関係者は指摘する。

東京をも上回る時給の主な原資は外国マネーだ。外国人観光客の支払う宿泊費は一般的な施設であっても冬場は1泊1室10万円を下らない。外国マネーの流入が地域の多くの住民に経済的な恩恵を与えていることは、間違いのない事実だ。

寂れた田舎駅だったJR倶知安駅前商店街の土地の価値は急騰した。先祖から受け継ぎ、保有していた多くの住民は土地を外国人投資家に売却。札幌にマンションを購入し、悠々自適の生活を送る人も多い。

土地だけにとどまらず、古家さらには家具や布団、湯飲みなどの生活用品に至るまで、すべて現状のまま購入するのが外国人の契約スタイルだ。更地渡しが求められる日本人相手よりも売却する側からすればはるかに手離れがいい。「ちょっと前まで、『絶対に外国人にだけは売らない』と言っていた町の有力者が、結局、外国人に売却し、申し訳なさそうな顔をしていたのが象徴的だ」(地域住民)

海外からのマネー流入は、住民に経済的な利益をもたらすと同時に、地域の様子を短期間で変容させてきた。変わってきたのはコロナ禍前からだ。「最初は、ささいな行き違いだった。とくにゴミ出しを巡って感じた小さな違和感が、外国人を異端視するきっかけにつながった」(前出の住民)

倶知安町では金属製のゴミステーションに決められた曜日の早朝に「もやせるごみ」「資源ごみ」「生ごみ」などに分けて出すことになっている。ところが、外国人が居住する地域では「決められていない日にゴミ出しをしている」「袋に入れないで、ゴミを投棄している」「分別がいい加減で、不衛生な状態になっている」などという不満が町内のあちらこちらで渦巻き始めた。地域住民が長年、清潔に保ってきたのに、外国人が増えてきてから、ゴミステーションが無法地帯となったことは、異文化への拒否反応を醸成するには十分すぎるきっかけだった。

人口1万5千人弱の倶知安町で、今年1月時点で住民登録をした外国人の人口は3700人超と2割を超える。「住民登録をしていない短期リゾートバイトの外国人はさらに多い。観光客も冬場はほとんど外国人。町にいるヒトの半分以上が外国人で占められているような感覚」(地元の観光施設の職員)なのだという。

ゴミ出しだけではない。夜になっても大音響で音楽をかけ続け、重低音が周辺に漏れる。屋外でバーベキューをしているときも派手な音楽をまき散らし、十分に片付けをせずにゴミを放置する。「外国人が増える中で、自分たちのスタイルで生活することがこの町では当たり前になってしまった。日本人の住民には異文化への不安や不満が鬱積していった」(同上)

地域内の日本人の中の経済格差が外国人嫌悪につながっているとの声もある。「外国マネーによって地域が潤ってきたのは事実。でも、そのビジネスにうまく乗り切れなかった人もまた地域にはいる。マネーの偏在が極端になればなるほど、恩恵から遠ざけられた側の反発は強くなる」(地元の観光関係者)

そこに外国人への嫌悪をあおるような事案が発生した。中国資本が主導する別荘2棟の建設工事が、都市計画法に違反して無許可で行われていたことが明らかになったのだ。3.9ヘクタールの森林を伐採しており、北海道庁は6月に工事の停止を勧告。現在も工事は停止中だ。なにより、住民たちが景観を重視し、厳しい開発規制がかかっている羊蹄山の麓で違法伐採が行われていたことが、住民の中に鬱積していた反外国人感情に火をつけた。

参院選での参政党の善戦を受けて、今後、外国人への新たな土地取得の規制が強められたとしても、すでに外国資本が多くの土地を購入し、主導的な立場を得ているニセコ地域の状況が改善する見通しはない。むしろ、ニセコ地域では国内資本と外国資本の間で保たれてきたバランスを崩しかねない取り組みが進んでいる。2009年以降休業している倶知安町内のスキー場を香港資本が主導して復活させる動きがあり、すでにスキー場の周辺の土地の多くを外国人、外国資本が取得しているのだ。

「地域どころか、国内の資本がほとんど関与できないままに、新しいリゾートが形作られかねない」(同上)。オーバーツーリズムが指摘される中での外資主導の新たなリゾート開発は、外国人と地域住民とのさらなる摩擦を生みかねない。

地域住民の懸念の矛先は、法律があっても、担い手不足から、十分な監視ができていない町や北海道庁の体制の不備にも向かい始めている。

開発で嫌悪が渦巻く街に

バブル経済崩壊後、スキー人口の急減で瀕死の状態にあったニセコ地域にオーストラリア人が目をつけ、外国人向けのリゾートとしての開発が始まってから四半世紀が経過した。かつて、外国マネーの流入の先進地と評され、寂れ行く地方の希望となっていたニセコ地域は、過剰な開発が進む中で、外国資本や外国人への嫌悪が渦巻く町になりつつある。

人口減が進み外国人への依存が強まる国内で共生を掲げるのであれば、外国資本の進出と外国人の急増が住民に嫌悪を生み出した「先進地」であるニセコ地域の現状を見定めることが不可欠だろう。(敬称略)

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