2025年9月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
連合の芳野友子会長
工業用ミシン大手のJUKIは7月にトランプ米政権の関税措置や長期化する中国経済の低迷が続くとし、50歳以上65歳未満の社員を対象に早期退職を実施すると発表した。リストラに踏み切った背景には長引く業績不振がある。
JUKIは連合の芳野友子会長の出身母体。今も労働組合委員長を兼務する。芳野氏は2021年に連合初の女性会長に就任。春闘の時期になると、賃上げの実現を呼びかけるのが毎年の風物詩だ。今年も5%台の賃上げを実現し、活躍を見せた。ただ、お膝元がリストラとあっては示しがつかず、面目は丸つぶれだ。
工業用ミシン市場で世界シェア1位のJUKIを取り巻く環境は厳しく、最終損益は3年連続の赤字。中国の安価なミシンメーカーの台頭で競争が激化し利益を圧迫している。競合他社の品質も向上するなど本来持っていた競争力が失われつつある。海外売上高比率が8割に上り、主力の工業用ミシンは中国やベトナムなどが主戦場。そのため各国の経済状況や米中貿易摩擦、為替動向、関税措置などの影響を受けやすい。
構造改革の指揮を執ってきたのが24年に社長に就任した成川敦氏。富士銀行(現みずほ銀行)出身で、フォスター電機で社長、会長を務めた後にJUKIに転身した。JUKIは代々、富士銀行出身者が社長に名を連ねる慣習がある。前社長の清原晃氏にいたっては、10年に社長に就任し、24年に会長を退任するまで長期政権を敷いてきた。そうした組織にはびこる風通しの悪さがガバナンス(統治)機能を低下させ、回復軌道を描けない原因になったとの見方もある。芳野氏は企業に賃上げの実現を声高に訴えるだけでなく、出身母体にもきちんと物申した方が良さそうだ。