連載コラム:「某月風紋」

2025年12月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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甲府盆地の縁にある山梨県南アルプス市と東京の2地域居住で週末農業を始めて5年。夏の暑さは年々ひどくなっており、今年は最高気温が37~38℃まで上がる日が続いた。午前9時には30℃を超えるから、農作業は早朝か夕方しかできない。雑草や虫との“闘い”に疲弊し、農家の大変さを実感する。

野菜作りは難しく、今年はトマトが早々に枯れサトイモも大きくならなかった。一方、ナスやオクラは秋になっても元気で楽しませてくれた。そして鳥のさえずりや、夏場に近くを飛び交う蛍に癒される。地元の農家や他の利用者とのゆるいつきあいも悪くない。

農林水産省によると、畑と小屋(ラウベ)をセットで貸し出す滞在型市民農園(クラインガルテン)は、24年3月末で全国49市町村に69箇所あった。農水省の担当者は「農業の理解促進には体験することが一番で、市民農園が増えてくれるとありがたい」と話す。

南アルプス市の場合、5年契約で2年の延長を認めている。延長申請に当たって困るのが、連帯保証人を求められることだ。かつて祖母から「他人の保証人にだけはなるな」と口を酸っぱくして言われたが、そもそも頼める人もいない。いまどき、賃貸住宅なら保証会社に保証料を払って保証してもらうのが一般的なのに、同市にそのような仕組みはない。

しかも保証人の要件を記した「注意事項」に「同居の親族でない方」とある。フルタイムで働く妻に頼めない一方、親に扶養されている大学生でも別居していればOKということか。不審に思い条例を取り寄せたところ、そちらは「独立の生計を営むもの」となっている。これなら妻でも大丈夫なはずだ。

市長に直談判しようか、などと考えていたところ、この原稿の締め切り間際に市の農政課から「山梨県の県営住宅が指定する保証会社の利用を検討する」との連絡がきた。

(ガルテナー)

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