連載「経済断影」/「メガソーラー支援停止」で業界再編の号砲

2026年2月号 BUSINESS [経済断影]
by 井伊重之 (経済ジャーナリスト。産経新聞客員論説委員)

  • はてなブックマークに追加

総裁選公約を実現(写真/堀田喬氏)

政府・与党が大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に対する規制強化に乗り出した。2027年度以降に建設する施設への補助金を廃止するほか、環境影響評価(環境アセス)の対象となる太陽光発電施設の出力基準を引き下げ、事業開始前のチェックも厳格化する。政府・与党は東京電力の福島第1原発事故以来、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの普及を進めてきたが、今回の規制強化は大きな政策転換となる。

高市早苗首相は、昨年10月の自民党総裁選で「再生エネに対する補助金の廃止」を公約に掲げた。その後、高市氏が率いる自民党は日本維新の会と連立政権を樹立し、その政権合意の中でも「再生エネを法的に規制する施策を実行する」と明記した。高市政権は関係閣僚会議で具体策の検討を進めており、メガソーラーに対する補助金を打ち切る方針を決めた。

出力1000キロワット以上のメガソーラーに加え、出力10キロワット以上の地上設置型の事業用太陽光発電施設は、市場価格に一定額を上乗せして電力を買い取る補助制度の対象外とする。事業開始に必要な環境アセスメントも、現行の出力4万キロワット以上から引き下げ、対象を拡大する。ただ、自然環境への影響が少ない屋根設置型の事業用・家庭用発電設備に対する支援は継続するという。

我が国では福島原発事故後、再生エネの普及に向け、太陽光や風力などの再生エネで発電した電力を電力会社が一定期間、決まった価格で買い取る「固定価格買い取り制度」(FIT)を導入。22年度からは市場価格に連動させて補助する「FIP制度」を設けた。買い取り費用の一部は「再生エネ賦課金」として、電気料金に上乗せして利用者が支払う仕組みだ。25年度の賦課金総額は初めて3兆円の大台に乗る見込みだ。

山林などを切り開いて建設するメガソーラーについては、景観や生態系の破壊、森林伐採に伴う災害リスクの拡大など様々な問題が指摘されている。最近では北海道の釧路湿原国立公園周辺や千葉県鴨川市などでメガソーラーの建設計画が浮上し、周辺住民との間で摩擦も起きている。また、大規模な陸上風力に対しても自治体や周辺住民の反対運動が強まり、計画の中止や撤回が相次いでいる。すでに再生エネの規制条例を独自に導入した自治体は全国で300を超えており、政府もようやく重い腰を上げた格好だ。

メガソーラーに対する補助停止は、業界再編を促す可能性が高い。出力1000キロワット以上のメガソーラーは全国に約9千カ所あるが、政府が再生エネの普及を優先して割高な買い取り価格を設定した結果、新興企業や地元企業などが市場参入し、メガソーラーを運営する企業は数百社に上るとされている。大手電力などのシェアは数%にとどまっており、支援停止で今後は大手企業が新興企業などのメガソーラーを統合する動きが加速するのは確実だ。

そうした大手企業によるメガソーラーの建設では、すでにFITなどの支援に頼らない事業運営が主流だ。全国で社会問題化しているメガソーラーは、地域ごとに合同会社が設立され、責任の所在が不明確で地元住民との協議窓口も分からないなどの事例も多い。政府関係者は「公的な支援の停止で大手による再編・統合が広がれば、地元住民にも安心してもらえる」と見ている。

政府は昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画の中で、2040年度の太陽光発電の電源比率を現行の9.9%から23~29%に2倍以上も増やす方針を打ち出した。

そこでは次世代の薄くて折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」を大量導入する予定だ。新技術を活用するためにも太陽光発電の合従連衡は不可欠だ。

著者プロフィール

井伊重之 (いい・しげゆき)

経済ジャーナリスト。産経新聞客員論説委員

政府税制調査会委員や産業構造審議会委員、社会資本整備審議会委員などを歴任。

  • はてなブックマークに追加