1200万本の注射用製剤の回収だけではない。セクハラ、パワハラ、人手が足りない。
2026年2月号 DEEP

東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長
年の瀬も押し迫った昨年12月下旬、後発医薬品大手の東和薬品で社員の不祥事が判明した。本誌が入手した社内資料によると、東和は同月23日に懲戒処分を受けて降格する社員がいることを社内向けに公表。理由は「脱税幇助行為により、社員としての品位を傷つける行為をしたため」と「環境型セクシャルハラスメント行為により、会社内の風紀秩序を乱したため」のふたつ。そして翌24日には営業本部に所属する営業戦略統括部長の男性を1月1日付で人事本部付主査に降格する人事を発令した。
東和では昨年2月にも、執行役員で渉外統括部長(当時)だった田中俊幸氏のパワーハラスメントが問題となった。後発品業界は業界再編が激しくなっているが、東和ではパワハラや製品の自主回収などの事案が相次ぎ、再編に向けた懸念材料となっている。

東和薬品の山形工場
降格された男性について、現役社員は次のように語る。
「彼は40代で、飲み会のたびに領収書を知り合いの会社の名義にしていたという。虚偽の領収書を渡して知り合いの会社の脱税を助けていた形だ。セクハラについても前々から指摘する声があった。執行役員の川村勝利氏を中心とした川村一派と呼ばれるグループのメンバーとされ、今回の降格の影響が社内でも話題となっている」
執行役員の川村氏は東和の生え抜きで、営業本部法人流通統括部長を担当。主に卸流通や代理店を任され売上に貢献してきた。
「川村氏は時代に逆行するような過大なアローアンス(販売奨励金)を医薬品卸に支払うような手法で実績を積み上げてきた。一方で川村一派では昔からパワハラやセクハラが噂されてきた。下ネタの武勇伝で盛り上がることも珍しくなかったと聞く」(現役社員)
東和は昨年、執行役員の田中氏による部下へのパワハラが発覚し、会社としての企業風土が問題視された。内部通報でまとめられた調査報告書によれば、「できない人間のレッテルを貼り、執拗に攻め込む」ことで部下を退職や病気休暇に追い込んでいた。東和は田中氏を渉外統括部長から外した後、内部統制システムの整備に関する基本方針を一部改正。コンプライアンス委員会のもと「風通しのよい企業風土」の醸成に向けて取り組む方針を示した。
創業家出身の吉田逸郎社長が率いる東和では、オーナー企業が陥りがちな「上にモノを言いにくい企業風土」が形成されていたのかもしれない。特に田中氏は吉田社長に渉外の手腕を買われ、虎の威を借りる狐のように振る舞っていた側面がある。社内では最近、パワハラやセクハラに厳しくなったという。今回処分を受けた営業戦略統括部長の事案発覚は、企業風土を改善しようと自浄作用を働かせた結果とも言える。
もっとも東和ではセクハラやパワハラだけでなく、肝心の医薬品製造で不安視される事態が起こっている。昨年8月、東和は注射用アンプル製剤15製品、約1200万本を自主回収して出荷停止にすると発表した。山形工場で製造されたアンプル製剤内に小さな黒い異物が混じっていることが判明。製造部品に使われていたゴムの破片が混入したと見られた。
医薬品工場で異物が混入して自主回収に至る事例は稀にだが発生する。問題は東和の対応の遅さで、混入判明から1200万本を回収する判断まで3カ月の時間がかかった。東和は昨年5月、未開封のアンプル製剤「トブラシン注90㎎」に異物が混じっているとの情報を得て調査を開始し、翌6月に該当する1ロットだけを引き揚げていたが、原因究明に手間取り混入時期も特定できていなかった。
東和で1200万本ものアンプル製剤を対象とした大規模な回収は前例がなく、さらに市場への影響も懸念されたことから回収を躊躇した模様だ。本誌が入手した緊急会議の音声によると、「会社として見通しの甘さがあった」と対応のまずさを認めている。
混入事案があった山形工場では昨年7月、錠剤をつくる固形製剤棟の機械室から出火する出来事もあり、何かとトラブルが続いている。そもそも山形工場をめぐっては、人員不足が指摘されてきた。製造業でも徹底した品質管理を求められる製薬企業の工場勤務は、遵守事項が多く覚えることも多いため敬遠されがち。採用してもすぐに辞めてしまうというのは業界共通の悩みだが、東和の山形工場の場合、近くに比較的待遇のよいとされる会員制倉庫型店舗のコストコがあるなど人員の確保が難しい状況にある。
東和の國分俊和取締役は昨年11月に開いた26年3月期第2四半期の決算説明会で「採用を強化した。4月の段階で足りている」と強調。離職率も低くなったとしたが、今度は「教育する人材がいない。岡山工場や大阪工場から応援に来ている」と、苦慮している様子をうかがわせている。
懸念されるのは、社員の不祥事や工場でのトラブルが他社との協業に悪影響を及ぼさないかという点だ。現在、後発品企業は業界再編の真っ只中にある。昨年6月には、明治ホールディングス傘下のMeijiSeikaファルマと富山県の後発品企業ダイトが協業を発表した。「新・コンソーシアム構想」と銘打ち、製品の品目統合や製造での協力を他社にも呼びかけ、すでに辰巳化学、日本ケミファが参画を表明。計7社のグループを形成して勢いづいている。
Meijiと言えば、新型コロナワクチン「コスタイベ」を開発した会社としても知られ、「反ワクチン」運動の標的にされた。Meijiは、反ワクチンに強い影響力を与える発言をしてきた立憲民主党の原口一博衆院議員を名誉毀損で提訴したが、そのときの社長が新・コンソーシアム構想を提唱した小林大吉郎会長だった。小林会長はダイトの松森浩士社長と昔から懇意で意気投合。小林会長は元総務相の国会議員を訴えるほどの強気の人物のせいか、当初、他の後発品企業から警戒されていたが、松森社長が緩やかな連携にすることを促して参画企業が増えた。
一方、品質問題を起こして経営難に陥った日医工に関しては、企業再生ファンドの「ジェイ・ウィル・パートナーズ」(JWP)が経営再建を支援。JWPのもと共和薬品工業、T’sファーマ、日医工を傘下に収めた持株会社「アンドファーマ」が昨年7月に発足した。さらにアンドファーマには、持田製薬と伊藤忠商事が、それぞれ20%ずつ出資。先発品企業や商社も巻き込んだ業界再編が進む。日医工については、沢井製薬と品目統合に向けた協業を組むなど台風の目となっている。
各社が再編に突き進む中、出遅れ感のある東和だが、吉田社長は協業について、今年中に「一定の話ができる」と語っており、いよいよ動き出す気配を漂わせている。すでに後発品企業だけでなく、先発品企業とも連携するというサプライズ発表の可能性も囁かれる。ただ、協業相手からすると、さらなる醜聞は勘弁してもらいたいところ。東和には膿を出しきってほしいものだ。