本業に貢献するもう一つのチカラ/ファンケルスマイルの挑戦

ファンケルグループを支える縁の下の力持ち。時代の先を行く特例子会社の取り組みを追った。

2026年7月号 INFORMATION

化粧品サプリメントのサンプルセット業務

「障がいのある人が働く現場を担当するようになり、彼らのさまざまな個性や、自己実現の物語に日々驚かされ、感動しています。並外れた集中力や、私より優れた記憶力の持ち主もいます。一人ひとりが活躍できる職場づくりをしていきたい」

こう話すのは、障がい者にとって理想的な就職先として全国的な人気を誇るファンケルスマイル(神奈川県横浜市)の齋藤潤社長だ。ファンケルの執行役員人材本部長も兼務し、障がい者雇用の現実に日々向き合っている。

本体事業に欠かせない多彩な業務

ファンケルスマイルの齋藤潤社長

ファンケルスマイルはファンケルの特例子会社として、創業者の池森賢二氏が障がいのある人たちに雇用の場を提供したいと1999年2月に設立。化粧品やサプリメントの製造販売を手掛ける本体事業の一翼を担い、グループに欠かせない存在となっている。

ファンケルスマイルが担当するのは、化粧品やサプリメントのセット作業、販売促進活動に欠かせないスキンケア化粧品のサンプル結束業務、グループ全社員の名刺印刷、研究所内の試験容器の洗浄、化粧品の使用済みプラスチック容器の回収とリサイクルの取り組みなど、多岐にわたる。

たとえば、化粧品サンプルは、顧客が手に取る大切な商品である。ファンケルスマイルの従業員が心を込めて、折れたりしないようにセットしていく。その丁寧な仕事に社内評価も高いという。

容器リサイクル業務

また、数年前に始まった化粧品の使用済みプラスチック容器のリサイクルの取り組みも本格的に行っており、グループ内の環境対策の向上に貢献している。齋藤氏は「化粧品のプラスチック容器を素材ごとに部材を分けて粉砕しています。自社で回収してリサイクルしているのは珍しく、その一端を当社が担っています」と話す。

グループ全体の業務処理に貢献している一方、本業と関係なさそうな製菓事業もある。 「当社の設立当初から、一緒に年齢を重ねてきた従業員たちに、長く働いていただける環境を整えようとスタートさせたものです。誰しも、年齢と共に細かい作業が難しくなることがあります。お菓子作りなら、たとえばクッキーの生地を型抜きするのに失敗しても、やり直すことができます。楽しく取り組めて、さらに地域コミュニティとの交流も育まれます。当社で最も重要な事業といっても過言ではありません」(齋藤社長)

製菓事業でつくったクッキーは、近隣の役所や企業などに出張販売している。販売先では「この前に食べたものが美味しかった」などと声をかけられることが多く、従業員のモチベーション向上につながっているという。

これからは「数字よりも質」を追求

製菓事業のクッキー製造業務

ファンケルスマイルでは、94名の障がい者が正社員として働く。彼らの仕事を親会社からの出向社員ら支援スタッフ39名がサポートする(26年4月1日現在)。ファンケルグループの障がい者の雇用率は4.38%にも達している(25年6月1日現在)。民間企業の法定雇用率2.5%は7月に2.7%へと引き上げられるが、これを大きく上回っている。

「これまで雇用促進に力を注いできましたが、今後は、一人ひとりが能力を発揮し、いきいきと活躍できる雇用の『質』にも一層力を入れていきます」(齋藤社長) 

従業員のほとんどは知的障がい者であり、中には重度の障害をお持ちの方もいる。

「私たちはその方々の能力を引き出すうえで大切なのは、仕事に興味をもって主体的に取り組んでもらうことだと考えています。ある程度任せることで驚くほどの成長を見せてくれます」(齋藤社長)

採用時に最も重視するのは「本人のやる気」だが、就職後、人によっては出社時に仕事へ気持ちが向かなくなることもあれば、資格を取得したい、もっと会社に貢献したい、とチャレンジ精神が旺盛な人もいる。

ファンケルスマイルでは、支援スタッフらが各現場のリーダーとなり、常に従業員と個別に向き合っている。その目的は、従業員の成長を促し、一人の社会人として自立してもらうことである。グループにこういう会社があることに誇りを抱き、親会社から出向を希望する社員も多いという。

今後は、障がいのある人たちからもリーダーを抜擢しようとしている。齋藤氏は「これまでは平等でしたが、今後は公平を重視して、できる人にはもっと活躍の場を拡げていきたい」と話す。

設立当初は仕事が見つからず、近隣地区の掃除などをして過ごしたこともあったというが、いまやグループを支える大きな力となっている。飛躍のきっかけは、黒字化をめざしたことだった。グループ全体から仕事が舞い込み、大きく成長を遂げた。単なる雇用率の達成や弱者支援のためではない、一人ひとりの人生に向き合う使命感がファンケルスマイルを動かす原動力であろう。

(取材・構成/ジャーナリスト 浅井秀樹)

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