BYD追い越し/「アップル」の野望に迫る「ファーウェイ」/トヨタの覇権を奪うのか

2026年9月号 BUSINESS

フラッグ・シップSUV「問界M9」

「プロジェクト・タイタン」。かつて米アップルが自動車事業への参入を検討していた際の極秘プロジェクトの名称だ。2024年に中止となったことが報じられた。

アップルは、付加価値の高い車の頭脳となるソフトウエア開発は自社で担ってアップルらしい移動体験ができる自動運転車の企画・開発を行い、車体製造は既存の自動車メーカーに委託するとみられた。まさにスマートフォン「iPhone」の企画・開発はアップル、製造は台湾の鴻海精密工業などに委託するビジネスモデルと同じで、韓国の現代自動車がアップル車の受託生産を行うのではないかと報じられたこともある。

アップルがこのようなビジネスに打って出ていれば、自動車産業における覇権をカーメーカーから奪っていた可能性がある。そうしたアップルの「野望」を実行段階に移したのが、中国の通信機器大手ファーウェイだ。

23年頃から自動車事業を本格化させ、自動運転などのインテリジェント・ドライビングシステム、車内における音声操作などのインテリジェント・コックピットシステムなどに力を入れている。車のOSは、ファーウェイのスマートフォンで採用されている「ハーモニーOS」をベースに開発したものを使う。自動車事業を「スマートカーソリューション」と位置づけている。

ファーウェイは自社で自動車は生産しない。上海汽車、北京汽車など5つの自動車メーカーと協業し、「尊界」「智界」「享界」などメーカーごとに5つのブランドを保有していることから「五界」とも呼ばれる。

その実態は、協業とは言いながらも、アップルと鴻海の関係に近く、自動車メーカーはファーウェイの下請けと化している。まさにアップルが目論んでいたことを実践しているのだ。

米中対立の煽りを受けてファーウェイは米国政府の「エンティティリスト」に載っており、ファーウェイ向けの輸出には米政府の許可が必要だ。

そうした状況下でファーウェイは米国の干渉を受けない中国市場での自動車事業に活路を見出し、新規事業として強化した。同社の自動車事業は急成長し、25年は450億元(約1兆円)を売り上げた。ファーウェイ全体の売上高に占める割合は5%程度だが、対前年比での伸び率が72%で同社最大の成長ビジネスとなっている。

日本国内では軽自動車のEVを発売した中国で最も販売台数が多いBYDの動向に注目が集まるが、車の知能化に関しては「もはやBYDはファーウェイの敵ではない」といった見方が中国内では支配的だ。スマホとの連動性を高めた「動くデジタル端末」という位置付けのファーウェイ車は、若者に人気があるという。これに対し、BYDは中国では「おじさん車」とみられている。

25年秋には日産がセダン「ティアナ」にファーウェイのスマートコックピットを採り入れ、トヨタ自動車も今年3月に発売した中国市場限定のEV「bZ7」ではファーウェイの車載OSを採用した。

注目されるのが、「世界のトヨタ」が27年から上海新工場で造る、同社の最高級車レクサスのEVにファーウェイの技術を採り入れるか、だ。トヨタは、自動車メーカーを下請け化するファーウェイの「野望」に気づいていることだろう。一方でファーウェイの知能化技術を採り入れなければ、中国市場での競争に劣後しかねない。

ファーウェイはトヨタから覇権を奪うのか、トヨタはそれを守るのか。両社の鍔迫り合いが始まろうとしている。

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