源氏物語を「楽しみ尽くす」方法/歴史に残る巨編を書けた理由/半世紀の愛好家・柳辰哉

2024年4月号 LIFE [卑下と矜恃が同居する心の内]

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源氏物語には、本文そのものを味読することに加えて、紫式部がなぜこんなに凄い文学作品を創作できたのか、作者として伝えたかったメッセージは何なのかを考える楽しみがあります。

出自の劣等感と誇り~明石の君の描き方~

紫式部の本名はわかっていません。生まれた年は西暦九百七十年代と見られますが諸説あります。父親の藤原為時(ためとき)は漢詩など文学に長けた受領(ずりょう)階級でしたが、式部の曽祖父の藤原兼輔(かねすけ)は和歌の名人として知られる公卿(くぎょう)で、娘を天皇に入内させた名門でした。紫式部は、世渡りが下手で無官の時期もあった父親を見て出自の低さを痛感する一方で、過去には高貴な家柄だったことにプライドを持っていたと見られます。そのせいか源氏物語の中で、階級や家柄の影響を受ける登場人物の人生を描くときは特に筆に力がこもっているように感じます。その典型として、光源氏の側室の一人と ………

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