スクープ! 物流で急成長「イー・ロジット」資金繰り変調

3月に2つの物流センターを閉鎖。銀行に融資の申し込みに回っても、軒並み断られている模様。

2024年5月号 BUSINESS

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イー・ロジットのHP

ネット通販の物流代行事業などを手掛ける東証スタンダード上場の「イー・ロジット」の資金繰りが変調をきたしており、周囲の注目を集めている。

イー・ロジットは2000年に大阪府東大阪市で設立され、09年、東京都千代田区に本店を移転した。上場したのはいまから3年前の21年3月だ。

しかし、その翌年の決算(22年3月期)で早くも1億9500万円の営業赤字に陥り、23年3月期は2億8800万円の営業赤字と赤字幅が拡大してしまった。さらに24年3月期(後述の買収で連結決算に移行)の営業損益も2億5千万円の赤字見通しとなっている。人件費やシステム関連投資の負担が重いというが、「上場ゴール」と陰口を叩かれても仕方のない状況だ。

こうしたなか、2月に発表した第3四半期の決算短信で「継続企業の前提に関する重要事象等」というリスク情報が初めて記載された。注目の資金繰りについては「引き続き取引金融機関と緊密に連携・情報交換を行っており、将来必要となる資金についてもご支援いただけるような良好な関係を継続できるよう対応してまいります。また、金融機関以外からの調達についても適宜検討を進めている」などと記載した。

「金融機関以外からの調達」とは何を指すのか。会社は本誌の質問に対し「23年10月に第6回新株予約権の発行をしてエクイティファイナンスを実施しております」などと回答した。しかし、信用調査会社の情報マンは「最近複数のノンバンク筋にイー・ロジットと子会社のアビスジャパンが億単位の融資やファクタリング(売掛金の買い取り)を打診している」と明かす。

アビスジャパン(さいたま市北区)は昨年10月に買収した建設関連の会社。代表の笹尾隆氏は17年にネット通販会社「ストリーム」の株価操縦事件で逮捕された笹尾明孝氏(当時64)の息子としても知る人ぞ知る存在だ。アビス社については20年2月、投資会社のマーチャント・バンカーズ(東証2部、現スタンダード)の出資を受けて同社の関連会社となった際にもブローカー界隈で話題になった。しかし、翌年7月にマーチャント社はアビス社の株式を売却してしまい、今回イー・ロジットがアビス社の全株を笹尾隆氏から取得したというわけだ。

イー・ロジットは特定建設業の許可をもつアビス社の買収で物流2024年問題のソリューションとなる大型自動倉庫システムの販売に力を入れていくというが、財務負担は軽くない。23年12月末の連結有利子負債は同年9月末の単体有利子負債より7億5200万円も増えてしまった。一方、現預金は5億3100万円も減少した。事情通によると「一時ヤマト運輸や佐川急便への支払いが遅れ、前金取引を要求された」という(会社は「4月5日現在、そのような事実はございません」と回答)。

テコ入れに向け、昨年9月末に創業者の角井亮一氏が代表権のない会長に退き、常務だった谷辻昌也氏が社長に昇格した。さらに今年3月には埼玉県三郷市と東京都足立区の物流センターの閉鎖を決断した。しかし、某銀行の審査担当は「いろんな銀行に融資の申し込みで回っても、軒並み断られているようだ。いまの業績ではうちも含めてカネは出せない」と厳しい対応を示している。

   

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